18 教育問題

消費者よ、賢く強くなれ 

 

江西師範大学に赴任していた時、CDプレーヤーを市内の電気店で買った。しかし、そのコードが短いので、壁のコンセントとの間を繋ぐ『延長コード』が必要となって、学内の超市(スーパー)で買った。ところが、十日前に買ったばかりの延長コードが故障してしまったので、その店へ行って女店員にいった。

不良品で女店員と揉める

「新品と交換するか、修理するか、どちらかにしてもらいたい」

だが女店員は、事務的な態度で首を横に振った。

「一週間の保証期間が過ぎているので、修理店へ行ってください」

 ということは、私がお金を払って修理しなければならないのだ。中国にはそんな商習慣があるのかもしれないが、日本人の私にはとうてい納得できない。店員に抗議した。

「延長コードなど、10年は使えるものなのに、たった10日で故障したのはなぜだ。不良品を客に売るなんて、あなたの店は無責任だぞ!」

だが、店員は折れる様子がない。こんな時、中国人は絶対に非を認めたがらず、頑固である。国有鉄道の職員など公務員にこの種の横柄な態度が顕著で、私が一番嫌いなタイプである。

日本語の分からない中国人店員と中国語が分からないヘンな外人の私は、互いに下手な英語を交えながら延々と押問答を続けていた。気がつけば学生たちがたくさん私を取り囲んでいる。彼らは、私を同胞の店員を困らせている不良外人だと、敵意を抱いているのだろうか?

いや、純朴な学生にそんな悪意は無さそうである。彼らは、野次馬根性で、どちらに味方するわけでもなく、単に「何事が起こっているのだろうか?」と、興味本位で様子を眺めているのだろう。

一人の女学生が、英語で話す私と中国語で話す店員の間の通訳を買って出てくれた。英語科の学生らしい通訳嬢のお陰で、交渉は円滑にすすむようになり、私はますます元気が出てきた。それにはもうひとつ大きな理由と目的があったのだ。

――私の主張は、店員に向けるだけでなく、いやむしろ、周りの学生に伝えたい。

 そんな願望が我が胸のうちに沸き上がっている。

 

日本製品の品質とアフターケア

日本の工業製品は、半世紀も前(私が子供の頃)には“安かろう、まずかろう”という評判が欧米各国で一般的だった。しかし現在、自動車・電子機器などあらゆる分野の日本製品が、高品質で低価格、そして故障しない、という高い評価を世界から受けている。

それは、科学技術の進歩と労働者の高い技術力によるものだ。もうひとつ忘れることのできないのは、安くて高品質の製品を要求する『消費者からの強い圧力』があったからなのだと思う。消費者の期待を裏切る不誠実な店があれば、客は二度とその店には行かないし、不良品を製造した会社の製品も買わないという、消費者の厳しい要求が高まっているのだ。客に見放された店やメーカーは、経営がいきづまり、最後に倒産してしまうだろう。だから、

――お客様は神様です!

という、顧客を大切にする精神を生みだすようになった。こんな “消費者パワー”では、中国はまだまだ日本に及ばない。さて、話を戻して、あの『延長コード』の問題はどうなったか?

とうとう、店員が折れて、新品と取り替えてくれた。

 

 店員との二人芝居を見終わった野次馬たちの多くは、満足そうに散って行った。中には私と握手する学生すらいたほどだ。きっと、学生たちは私の“ツッパリ”の中から何かを感じ取ってくれたのだろう。

賢い消費者になれ

中国社会を改革・発展させていくのは、まず現役の大人たちだが、それに加えて、これから社会に巣立っていく若者の力に負うところ大だと思う。

 

――賢くて逞しい消費者は、この学園の中から生まれ育って欲しいものだ! 

私はそう念願している。